記憶力より素直さが大事
30代、40代になると、中学、高校の時に比べて記憶力が落ちると言われます。しかし、多くの人は、それを漫然と「年齢」のせいにするだけで、どうして記憶力が落ちたのか、その理由を考えようとしません。
大人の記憶力が落ちる原因は、「暗記勉強をしなくなったから」です。思い出してみてください。小学校から高校までは、漢字、公式、年号...など、暗記することがたくさんありました。たとえそれが試験前の一夜漬けであったとしても、必死に覚えこむという練習を繰り返していたのです。
しかし多くの大人は、学校を卒業して以来、暗記学習をやっていません。これでは記憶力が落ちるのは当然です。暗記学習はスポーツと一緒ですから、3日も練習を休むとたちまち元のレベルに戻ってしまうのです。
年齢のために記憶力が落ちたと言い訳する暇があったら、手近な英文の一節や重要例文集の一部を暗記することから始めましょう。毎日暗記勉強を続けるうちに、脳の働きがどんどんよくなり、暗記がさらにはかどるようになります。
以上述べたように、大人の英語学習において、記憶力は、あまり心配する必要はありません。むしろ問題なのは、「人の話を素直に聞けない頑固さ」です。これが、最大の学習阻害要因と言えます。いい教材があっても、「この本をやって本当に英語ができるようになるのだろうか?」と考えたり、素直に覚えればいいのに何だかんだと講釈をつけて勉強を進めないタイプです。この種の人間は、語学学習には向きません。自分で何か高尚な
理論か何かを発明したらいいでしょう。
以前、大学を出て数年間企業で働いた後で、再びある大学を目指して予備校に入ってきた男がおりました。私がある授業でたまたま冠詞の話をしたときのことです。このホームページの「冠詞ノート」に出てくる furnitureの話などをしました。授業の後、この男からの質問カードが来ていたので見てみると、「どうしてfurnitureが不加算名詞になるのか、納得できません」と書いてありました。
こういう場合、ふつうの人は「わかりません」と書きます。文法や語法は「納得する・納得しない」ものではないからです。真面目に働いていて何の落ち度もない人が、いきなり会社から「解雇する」と言われたら、思わず「どうしてですか?納得できません」と言うでしょう。「納得できない」とはこういう場合に使う言葉です。
私は、質問カードに、再度、説明を書いた後、ピーンとくるものがあったので、その男の卒業した高校を名簿で見ました。すると思った通り、その男は、その学区で一番レベルが上の高校を出ていたのです。どういうことかといえば、この男は英語の実力は全くないくせに上位の高校を出たプライドだけは人一倍高いのです。それで、自分が高校の時に習いもしなかった内容を予備校で聞かされて、プライドが傷ついたのでしょう。その深層心理が「納得できない」ということばに表れたのです。果たして、その数ヵ月後、この男は予備校に来なくなりました。予備校はいろいろなタイプの人間が集まるところですので、人間観察の勉強になりますね。
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